2025-04-18 コメント投稿する ▼
スタートアップ支援の陰で広がる「知財搾取」と「性被害」 衆院委で規制強化を要求
女性起業家への性被害と知財搾取 スタートアップ支援に“落とし穴” 衆院委で規制求める声
「スタートアップは応援されているはずなのに、なぜこんな目にあうのか」――。
18日の衆院経済産業委員会で、日本共産党の辰巳孝太郎議員は、大企業が優位な立場を使って新興企業に不利な取引を強いている現状や、女性起業家への深刻な性被害の実態を取り上げ、実効性ある規制を求めた。
知的財産を「持っていかれる」スタートアップ
近年、政府はスタートアップ支援に力を入れてきた。企業数は増加しているものの、現場からは「支援の裏に“搾取”がある」との声が上がっている。
辰巳氏が取り上げたのは、大企業との共同研究や取引の場面で、新興企業側が技術やノウハウを一方的に提供させられてしまうケースだ。いわゆる「知財搾取」と呼ばれるこの問題では、「契約上不利でも、断れば仕事がもらえない」と泣き寝入りする企業も少なくない。
実際、経済産業省の報告書でも「スタートアップは取引先との力関係で劣位に立ちやすい」と指摘されている。
辰巳氏は「規模が違いすぎて交渉にもならない。取引慣行を放置すれば、イノベーションの芽を摘むことになる」と危機感をにじませた。
これに対して武藤容治経産相は、「適正な取引環境の整備に取り組む」と答弁し、是正に向けた姿勢を示した。
女性起業家の5割超が性被害 声を上げられない現実
さらに辰巳氏は、もう一つ見過ごせない問題として、女性起業家への性被害を取り上げた。
2024年7月に発表された調査では、女性起業家の52.4%が過去1年以内にセクシュアルハラスメントを経験していたという。にもかかわらず、その被害を周囲に訴えられたのはわずか14.8%。「報復が怖い」「資金提供が打ち切られるのでは」といった恐れが背景にある。
「特に出資者との関係では、声を上げたくても上げられない。ビジネスの場にあるまじき構造的な問題だ」と辰巳氏は訴えた。
スタートアップユニオンが提言する5つの対策の中には、▽女性起業家へのハラスメント禁止▽権力構造を踏まえた実効的な措置▽相談窓口の設置――などが含まれている。
辰巳氏は、「少なくともベンチャーキャピタル向けの行動指針に『セクハラ禁止』という明確な文言を入れるべきだ」と求めた。
武藤経産相は「表記の修正を含め、政府の責任で対応していく」と応じた。
支援の名のもとに放置される“格差と被害”
スタートアップ支援は日本の成長戦略の柱とされている。しかし、成長の影で生まれる「弱者」と「声なき被害」を見過ごすわけにはいかない。資金・人材を呼び込むだけでなく、公正な競争と安全な環境をどう守るか。今、問われているのは制度の中身と実効性だ。