2025-09-03 コメント投稿する ▼
志位和夫議長が提唱「新しい国民的・民主的共同」 極右対抗と生活課題の両立を問う中央委員会総会
志位和夫議長が示した危機認識と「新しい国民的・民主的共同」
日本共産党(共産)は3日、党本部で第6回中央委員会総会を開催し、志位和夫議長が発言した。志位氏は今回の総会を「日本の進路、わが党の命運がかかった重要な総会」と位置づけ、決議案の核心である二点――“反動ブロック”への対決と「質量ともに強大な党をつくる集中期間」の成功条件――について問題提起した。参議院選挙後に露わになった政治状況を「歴史的岐路」と捉え、市民と野党の幅広い共闘によって暮らし・平和・民主主義を守り発展させる「新しい国民的・民主的共同」を呼びかけたことが骨子である。
志位氏は、選挙後に他の野党や市民運動と意見交換を重ねる中で共同の条件が存在すると判断したと説明した。決議案は、自民党(自由民主党、LDP)と公明党(公明)の政権運営への不信とともに、政治の分極化・排外主義の台頭がもたらす危うさを直視し、対抗軸としての共同の枠組みを具体化する意図を示している。石破茂内閣の下で政策論争が再活性化するなか、政党支持の違いを超えた連携の実効性が試される局面でもある。
ネット上には多様な受け止めが並ぶ。
「“新しい共同”がどこまで現実的に機能するのか、具体策を聞きたい」
「極右や排外主義への対抗は賛成だが、生活改善の道筋も同時に示してほしい」
「野党間の連携は歓迎、ただし選挙区ごとの調整が鍵になる」
「理念だけでなく、地方の課題に即した政策パッケージが必要だ」
「与野党の対立を超える合意形成のルール作りが急務ではないか」
欧州の経験から学ぶ対極化対処:危機を機会に変える要諦
志位氏は、8月に行ったジェレミー・コービン氏(英国)、マルク・ボテンガ氏(ベルギー)、マルティン・シルデワン氏(ドイツ)らとの会談を踏まえ、欧州での極右・排外主義への対応を紹介した。共通の教訓は「古い保守政治への批判と民主的対案を明確に語りつつ、断固とした反差別の姿勢を貫けば、危機をチャンスへ反転し得る」という点である。単なる反対運動ではなく、雇用・賃金・地域公共サービスなど生活直結の課題に対する実効的な政策を伴った“包括的フロント”を築くことが成果につながっているという。
日本に引きつければ、物価や地域の人口動態、産業構造の変化が重なるなかで、社会の分断を煽る言説に対し、普遍的権利と包摂を軸にした「誰も取り残さない」政策提示が不可欠だ。志位氏の問題提起は、対立を固定化させるのではなく、合意可能な範囲を広げることに重心を置く点で、実務的な協議の入り口を示したといえる。
「集中期間」を成功させる三つの角度:情勢・循環型活動・学習
志位氏は「質量ともに強大な党をつくる集中期間」(9~12月)を成功させるための三つの角度を提示した。第一に情勢の変化の活用である。選挙後の危機感の広がりは同時に新しい期待の芽でもあり、受動ではなく攻勢的に対応すれば前進の契機となり得るとした。第二に双方向・循環型の活動である。党組織の高齢化など現場の困難を直視しつつ、「芽」を見出して広げる実践的な往復運動を組み立てる重要性を強調した。第三に量と質の一体的強化である。党員・読者拡大(量)と、科学的社会主義の学習(質)を同時並行で進める設計に初めて正面から位置づけたと説明した。
ここで示された「学び」の位置づけは、党勢後退の客観的要因として分析された「社会主義・共産主義の理解の不足」を反転させる試みでもある。「人間の自由」を核心に据えた理論再整理を通じ、理念と政策の接続を強化する狙いがうかがえる。こうした理論的再訓練は、賃上げや医療・介護、若年層の教育負担など要求実現運動の基礎体力を底上げし、現場の説得力を高める効果が期待される。
志位和夫議長発言が示す政治的含意:極右対抗と生活課題の両立をどう設計するか
今回の発言は、“反動ブロック”への対決姿勢を鮮明にしつつ、合意形成の回路を閉ざさないことに特徴がある。市民社会との協働を前提に、要求対話やアンケートなど現場起点のデータ収集を重視し、政策形成のボトムアップを図る発想は、選挙ごとの一過性の動員に対する反省とも整合する。加えて、電子媒体の活用を含む情報発信の強化は、若年層への到達に不可欠であり、党勢拡大の実効性を左右するポイントとなる。
同時に、生活直結の論点に対し、どこまで具体策を磨き込めるかは今後の試金石である。ガソリンや電気料金をはじめ、家計を圧迫するコスト要因への緊急対応と、中長期の所得・成長・地域再生の設計図を両立させる必要がある。地方の現場で見える課題を国政の議題へどう橋渡しするか、そして対立する立場とも事実ベースで合意を積み上げられるかが、提唱する「新しい国民的・民主的共同」のリアリティを左右するだろう。
党内運動の面では、「ねばならぬ」調でなく「芽を広げる」構成に改めたという語り方の転換は、持続可能なボランタリー活動を設計するうえで重要だ。ベテランと若手の世代的継承、現場と中枢の往復、理論と実務の統合――これらの要素が噛み合ったとき、集中期間は単なる数値目標にとどまらず、政策形成力と発信力の底上げにつながる。石破茂内閣下で政策競争が加速する今、志位氏の発言は、日本政治における対極化への対処と、生活課題への政策的応答をどう両立させるかという大きな課題を照射したといえる。