2025-11-11 コメント投稿する ▼
茂木外相がコスタリカ警察に5億円無償協力、麻薬組織抗争激化で日本製車両供与
コスタリカ政府は警察官を増員する一方で装備品不足に直面しており、装備品増強を通じたコスタリカ警察の法執行能力の強化が喫緊の課題となっている。 今回の5億円無償資金協力により、日本政府が日本企業製の警察車両を調達する資金を供与し、コスタリカ首都圏及び沿岸部(リモン市、プンタレナス市など)を含む全国の警察署に対し新車両が配備される。
茂木敏充外務大臣の外務省は、コスタリカ共和国における警察の法執行能力強化を支援するため、5億円の無償資金協力を実施することを発表した。2025年11月8日、コスタリカの首都サンホセにおいて、駐コスタリカ共和国日本国特命全権大使とアルノルド・アンドレ・ティノコ・コスタリカ共和国外務・宗務大臣との間で、供与額5億円の無償資金協力「経済社会開発計画」(警察車両の供与)に関する書簡の署名・交換が実施された。
平和国家の治安危機
コスタリカは1949年から常備軍を廃止し、「中米の楽園」と呼ばれてきた平和国家だが、近年は治安情勢が急激に悪化している。外務省の見解によると、コスタリカは南米から北米や欧州に運ばれる麻薬の中継地点となっており、麻薬組織間の抗争、銃の不法所持、犯罪の低年齢化、移民や路上生活者の増加等の影響で、国内の治安が深刻な状況にある。
2024年の殺人事件数は880件と、2023年の905件(過去最多)に次いで過去2番目に多い数値を記録した。2022年以前の656件と比較すると、わずか2年間で約200件以上増加しており、急激な治安悪化が顕著に表れている。人口10万人に対し16.6人の割合で殺人が発生しており、これは日本の0.3人と比較して極めて高い数字となっている。
「最近のコスタリカは昔と全然違う。麻薬組織の抗争が激しくて怖い」
「警察の装備が足りないのは明らかで、日本の支援は必要だと思う」
「税金5億円を海外に使うより、国内の治安対策に回すべきじゃないの」
「国際協力は大切だけど、なぜコスタリカなのか理由をもっと説明してほしい」
「中米の安定は日本の国益にもつながるから支援は理解できる」
麻薬中継地点化が犯罪増加の元凶
コスタリカの治安悪化の主要因は、国際麻薬犯罪組織によって南米産の麻薬を欧米へ運ぶ際の中継地点として利用されていることにある。2023年には年間合計約13トンのコカインが押収され、一度に数百キロ単位の麻薬が押収される事案が頻発している。麻薬組織が関与する犯罪に加え、麻薬の購入代金欲しさに行う短絡的な強盗や殺人等が首都のみならず観光地や地方都市で発生している。
特に深刻なのは麻薬組織同士の抗争や報復による殺人で、時間帯や人の目を気にせず発生するため、偶然通りかかった一般市民が巻き添えになるケースが多発している。大半の殺人事件に麻薬組織が関与しているとみられ、約7割の事件で銃器が使用されている状況だ。
コスタリカ政府は警察官を増員する一方で装備品不足に直面しており、装備品増強を通じたコスタリカ警察の法執行能力の強化が喫緊の課題となっている。緊縮予算を背景に治安対策への予算が増えない状況が続き、低賃金と職務の危険性から警察官の離職が増加し、パトカー等の装備品の整備や補充ができないという問題が深刻化している。
日本企業製車両で治安維持能力向上
今回の5億円無償資金協力により、日本政府が日本企業製の警察車両を調達する資金を供与し、コスタリカ首都圏及び沿岸部(リモン市、プンタレナス市など)を含む全国の警察署に対し新車両が配備される。これによりコスタリカの治安維持能力の強化につながることが期待される。
外務省海外安全ホームページによると、特にリモン市のセントロ地区やプンタレナス市のチャカリタ地区、エルロブレ地区、バランカ地区では多くの殺人が報告されており、危険レベル1「十分に注意してください」に指定されている。今回の車両供与により、これらの地域での警察の機動力と対応能力の向上が見込まれる。
税金使途への国益説明が必要
日本のODA政策について、首相官邸は「ODAは相手国や世界のためだけに行うものではなく、国益にもつながることが大前提」と説明している。しかし今回のコスタリカ支援については、5億円という税金を投入することによる具体的な日本の国益について、政府からの十分な説明が求められる状況だ。
コスタリカは人口約500万人の小国ながら、1949年から常備軍を廃止し、教育や福祉に予算を重点配分してきた平和国家として知られる。また、2024年11月にはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加入手続き開始が決定されており、今後の経済連携強化も期待される。中米地域の安定は、日本企業の進出や貿易拡大、さらには麻薬流入防止による国際治安向上にもつながる可能性がある。
コスタリカに対する日本の累積援助実績は2022年度まで、円借款1022億円、無償資金協力67.45億円、技術協力243.08億円に達している。今回の警察車両供与により、日本の対コスタリカ支援はさらに拡大することになり、両国の友好関係強化が期待される一方、国民への説明責任も重要な課題となっている。