2025-04-08 コメント投稿する ▼
企業倒産、11年ぶりの1万件超え 中小企業直撃の物価高と人手不足
企業の経営を直撃しているのは、原材料費や人件費の高騰に加え、深刻な人手不足だ。とくに打撃を受けたのは中小企業で、全体の約9割を従業員10人未満の事業者が占めている。倒産件数は全国9つのエリアすべてで前年を上回り、地域を問わず企業経営が厳しい状況にあることが浮き彫りとなった。
数字に見える倒産の実態
一方で、倒産による負債総額は2兆3,738億円と、前年度より約3.6%減った。これは、負債額100億円以上のいわゆる「大型倒産」が減少したことによる。中でも最大の倒産は、かつて国産ジェットを目指していた旧・三菱航空機(現・MSJ資産管理株式会社)で、負債は実に6,413億円にのぼった。
業種別ではサービス業や建設業が苦境
業種別に見ると、サービス業、建設業、製造業、卸売業など幅広い分野で倒産が増えており、特にサービス業では3,398件と最多。これは飲食や宿泊など、コロナ禍後に一時回復傾向を見せていた分野でも、コスト増に耐え切れなくなったケースが多いことを示している。
「人がいない」「給料が払えない」——人手不足倒産も加速
最近特に目立つのが、「人が集まらない」「人件費が高騰して雇えない」といった、人材確保に関する問題だ。人手不足を理由とする倒産は、求人難が122件、人件費の上昇が110件、さらには従業員の退職が原因のものが77件と、いずれも前年度を大きく上回った。
物価高の波が中小企業を襲う
エネルギーや原材料の価格高騰による「物価高倒産」も見逃せない。価格転嫁がうまくできない企業が苦しんでおり、とくに建設業や運輸業ではコスト上昇が直撃している。物価高を理由に倒産した企業は前年度より増え、700件に達した。
コロナ対策融資の終了も影響
新型コロナウイルス禍で実施されていた政府の経営支援策が終了に向かう中、支援に頼っていた企業の資金繰りが一気に悪化している。これまで延命できていた企業が、ここにきて一斉に倒れ始めている格好だ。
今後も厳しい状況が続く可能性
東京商工リサーチは、今後も倒産件数は「一進一退を繰り返しながら緩やかに増えていく」との見通しを示している。企業経営者にとっては、価格転嫁の工夫、コスト削減、資金繰りの改善、そして人材確保と、同時並行での対応が求められている。
- 2024年度の企業倒産件数は1万144件と11年ぶりに1万件を超えた
- 原材料費や人件費の上昇、人手不足が主な原因
- 中小零細企業が倒産件数の約9割を占める
- 負債総額は前年度比で減少、大型倒産が減ったため
- 倒産が増えた業種はサービス業・建設業・製造業など
- 「求人難」「人件費高騰」「従業員退職」など人手不足関連倒産も増加
- 価格転嫁ができず「物価高倒産」が続出
- コロナ支援策終了で資金繰り悪化、倒産増加に拍車
- 今後も倒産は緩やかに増加すると見られている