2025-04-04 コメント投稿する ▼
「日本版CDC」始動 コロナの教訓を踏まえ、健康危機対応の新司令塔に
JIHSは、これまで感染症研究を担ってきた国立感染症研究所と、感染症医療や研究を行ってきた国立国際医療研究センターが統合して誕生した。モデルとなったのは、アメリカのCDC(疾病対策センター)だ。新型コロナウイルス感染症の流行で浮かび上がった日本の対応の課題を教訓に、「日本版CDC」として機能することが期待されている。
式典では、初代理事長に就任した國土典宏(こくど・のりひろ)氏が「これまでの二つの組織の壁を取り払い、さらに一歩進んだ取り組みを進めたい」と意気込みを語った。副理事長には、新型コロナ対応の専門家会議で座長を務めた脇田隆字(わきた・たかじ)氏が就任した。
来賓として出席した赤澤亮正・感染症危機管理担当相は「政府としてもJIHSと緊密に連携し、次の健康危機に備えていきたい」と述べ、厚い期待を寄せた。
迅速な対応を支える4つの柱
JIHSが担う主な役割は以下の通りだ。
- 情報の収集・分析とリスク評価
感染症に関するデータをリアルタイムで収集・分析し、リスクの早期察知につなげる。政府への助言や、国民への分かりやすい情報発信も担当する。
- 研究と開発
基礎研究から臨床試験まで一貫して取り組む体制を構築。必要なワクチンや治療薬の開発をスピード感をもって進める。
- 医療現場との連携
感染症患者の診療にあたる病院機能も併せ持ち、現場で得られた知見を研究や政策立案に反映させる。
- 人材育成と国際連携
感染症のプロフェッショナルを育てるため、大学や海外機関との連携を強化。グローバルなネットワーク構築も目指す。
コロナ禍の反省から生まれた機関
新型コロナの初動対応では、国の方針が現場に十分伝わらなかったり、研究と行政の連携がうまく機能しなかったりと、さまざまな課題が浮き彫りになった。今回の統合は、そうした「縦割りの弊害」を乗り越えるための一歩でもある。
政府関係者の一人は、「危機の時こそ、情報を一元的に扱う“司令塔”が不可欠だ」と話す。JIHSの設立によって、日本の感染症対策の司令塔機能が大きく強化されることになる。
新たな一歩に期待
健康危機は感染症にとどまらず、気候変動や災害、化学物質の漏出など、多岐にわたる。JIHSはこうした幅広い事態にも対応できるよう体制を整えていく方針だ。
今後、政府との連携だけでなく、都道府県や民間医療機関との連絡体制の構築も求められる。発足したばかりの組織に課せられる使命は大きいが、同時にその存在感も今後ますます高まるだろう。
新たに生まれた「日本版CDC」が、次なる危機に備える確かな砦となれるか。国民の健康と安心を守る試みが、静かに、しかし力強く歩みを始めた。