2025-04-23 コメント投稿する ▼
障害福祉サービス費用が急増 財務省が報酬適正化・不正対策を提言、持続可能な制度改革へ
財務省、障害福祉サービス費用の急増に警鐘 「持続可能な制度へ費用抑制を」
財務省は4月23日に開催した財政制度等審議会・財政制度分科会で、障害福祉サービス費用の急増について「制度の持続性が危ぶまれる」と警鐘を鳴らした。今年度の障害福祉サービス予算は約2.1兆円と、10年前から倍増している。財務省は報酬適正化、事業者指定の厳格化、不正対策の3本柱による制度改革を提案し、抜本的な見直しを迫った。
障害福祉サービス費用の膨張、10年で倍増
財務省によると、障害福祉サービスの今年度予算は約2.1兆円で、障害児向けサービスは3倍強に拡大した。これは社会保障費全体の伸び率を上回るペースだ。背景には、利用者側に費用抑制のインセンティブが働きにくい構造や、事業所数の急増による供給過剰状態があるという。
特に、営利法人による参入が進み、競争激化により質の低下や不正行為が懸念される事態となっている。障害者支援の充実は重要である一方、持続可能な制度設計が求められている。
財務省が提案した3本柱の改革
財務省は障害福祉サービス制度を持続可能にするため、以下の3点を重点改革項目として提示した。
- 事業者指定の厳格化
サービスの見込量を精緻に見積もり、総量規制や意見申出制度を積極活用すべきとした。指定審査では、単なる形式要件ではなく、安定的なサービス提供能力を重視する方向へ転換するよう求めた。
- 実地指導・監査の強化
運営指導を徹底し、悪質事例には速やかに対処する体制整備が必要とした。自治体の監視機能強化もあわせて提言された。
- 不正行為への対処
加算金の見直しや、利用者紹介に伴う利益供与防止策を講じる必要性を強調。グループホーム運営事業者による組織的不正事例にも言及し、連座制適用の厳格化にも言及した。
財務省、報酬適正化でサービス質向上を目指す
財務省は、単なる費用削減にとどまらず、サービスの質を確保するための報酬体系見直しの必要性も訴えた。具体的には、質の高いサービスを適切に評価する加算制度の再設計や、実地指導を通じた事業者の質的改善支援が求められている。
審議会では、「質の向上と費用抑制の両立」がキーワードとして繰り返し言及された。単なる予算抑制策ではなく、利用者の利益を守りながら持続可能な制度を築くことが目指されている。
今後の議論と社会的課題
障害福祉サービスは、高齢化社会と並び日本の社会保障制度における重要課題だ。今後、厚生労働省や地方自治体との調整を経て、具体的な制度改正が検討される見通しである。
しかし、現場では「急激な抑制策はサービス低下を招く」との懸念も根強く、費用抑制と支援充実のバランスをどう取るかが最大の焦点となる。
- 障害福祉サービス予算は10年で倍増、制度維持が課題に
- 財務省は報酬適正化、指定厳格化、不正対策を提言
- サービス質の確保と費用抑制を両立する制度改革を目指す
- 現場からはサービス低下を懸念する声もあり、今後の調整が焦点