2026-09-27 コメント投稿する ▼
防衛産業の生産力維持へ 国がリスク負うGOCO方式検討
防衛省は、こうした危機感から、2026年度予算の概算要求に過去最大の8兆8908億円を計上し、「生産力こそ抑止力」を掲げて防衛生産・技術基盤の強化を打ち出しました。 国が設備投資のリスクを負担し、その一方で民間の持つ高度な技術力やノウハウを活用することで、平時においては効率的に、有事においては迅速に生産体制を構築することが可能になるでしょう。
弾薬補充の現実と国際情勢
2024年、中東情勢の緊迫化の中で、米陸軍がイランへの戦闘で長距離精密誘導ミサイルの大半を使い果たし、パトリオットなどの迎撃ミサイル在庫も大幅に減少したと、ロイター通信が報じました。この事実は、どれほど高性能な兵器を保有していても、弾薬や部品の補充能力がなければ、その力は一瞬にして失われるという現実を突きつけています。現代戦においては、兵器の性能だけでなく、それを支える持続的な生産能力こそが、戦争の行方を左右する決定的な要因となり得るのです。
企業の撤退と収益性の問題
防衛省は、こうした危機感から、2026年度予算の概算要求に過去最大の8兆8908億円を計上し、「生産力こそ抑止力」を掲げて防衛生産・技術基盤の強化を打ち出しました。しかし、防衛関連産業が長年抱える構造的な問題が、その強化を阻んでいます。毎日のように報道される企業の撤退は、その象徴と言えるでしょう。
毎日新聞は、防衛関連企業の撤退が相次ぐ背景に、主な納入先が自衛隊に限られることによる「収益性の低さ」を指摘しています。確かに、防衛産業は民需産業のように消費者が容易に増えるものではありません。しかし、同紙は「有事への備えを大義名分として投資が過剰になれば、採算は悪化する」と、さらなる拡大への懸念を示しました。
この論調に対し、小笠原氏は警鐘を鳴らします。撤退の原因を収益性の低さとしながら、まずは「過剰投資」への懸念を示すだけでは、根本的な解決策は見えてきません。現実には、「過剰投資」どころか、防衛装備品を開発・製造するために必要な投資さえ、企業が継続できない状況なのです。
建設機械大手のコマツが2019年に、開発費に見合う利益が見込めないとして、車両の新規開発を凍結すると防衛省に伝えたという報道は、その象徴的な例と言えるでしょう。過去20年間で100社を超える企業が防衛産業から撤退したとも報じられており、これは単なる収益性の問題に留まらない、産業基盤そのものの脆弱性を示唆しています。
新たな官民連携のGOCO方式
このような状況を踏まえ、防衛省は新たな対策として「GOCO(Government Owned, Contractor Operated)」方式の導入を検討しています。これは「政府所有・民間運営」を意味し、国が弾薬工場などの設備を所有し、その操業・運営を、高い技術力と経験を持つ民間企業に委託するという構想です。
弾薬工場などは、平時の発注量が限られている一方で、有事には急激な増産が求められます。その際に、普段はほとんど稼働しない生産ラインを維持・管理するためには、莫大なコストがかかります。企業が採算を度外視してまで、こうした設備投資を継続することは現実的に困難です。
GOCO方式は、こうした課題に対する有効な解決策となり得ます。国が設備投資のリスクを負担し、その一方で民間の持つ高度な技術力やノウハウを活用することで、平時においては効率的に、有事においては迅速に生産体制を構築することが可能になるでしょう。これは、防衛産業の持続可能性を高めるための、現実的な選択肢の一つと言えます。
生産力維持が国民を守る
世界最大の軍事力と防衛産業を持つアメリカですら、長期間の戦闘が続けばミサイル不足に直面します。長年にわたり国内での装備品生産能力を縮小させてきた日本においては、そのリスクはさらに深刻です。このまま防衛生産基盤が縮小し続ければ、たとえ防衛予算を大幅に増やしたとしても、必要な装備品を十分な量、迅速に製造・調達することは不可能になってしまうでしょう。
防衛装備品の安定供給は、現場で任務にあたる自衛官の安全を守ることに直結します。また、有事においては、国民の生命と財産を守るための最後の砦となるのです。防衛産業に関する報道においては、単なる予算規模や装備品の性能だけでなく、その背景にある「生産力」という視点が不可欠です。国が、民間企業だけでは担いきれないリスクを引き受け、生産基盤の維持・強化に積極的に取り組むこと。そして、それを報道が的確に伝え、国民の理解を促していくことが求められます。そうでなければ、いざという時に日本を守る力が失われてしまう危険性があるのではないでしょうか。
まとめ
- 国際情勢の緊迫化により、防衛装備品の弾薬・部品補充能力の重要性が増している。
- 防衛省は「生産力こそ抑止力」を掲げ、防衛生産・技術基盤強化のため過去最大の予算を要求した。
- 防衛関連企業の撤退が相次ぐ背景には、収益性の低さだけでなく、必要な投資すら継続できない実情がある。
- 「GOCO(政府所有・民間運営)」方式は、国が設備投資リスクを負い、民間の技術力を活用する新たな官民連携の形として検討されている。
- 国のリスク負担による生産基盤の維持・強化は、自衛官や国民の安全を守るために不可欠であり、報道でもこの視点が重要である。
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