2025-04-18 コメント投稿する ▼
備蓄米はどこへ? 小売店に届いたのはわずか0.3% 農水省が初の流通調査を公表
“備蓄米”の行方はどこへ? 小売店に届いたのはわずか0.3% 農水省が初めて流通状況を公表
政府が物価高対策の一環として放出した備蓄米が、ほとんど消費者の手元に届いていない――そんな実態が、農林水産省の調査で明らかになった。
農水省は4月18日、3月10日から12日にかけて実施した初回の備蓄米入札(約14万2千トン)に関する流通調査の結果を発表。そのうち、月末(3月30日)までにスーパーや小売店に並んだ量は、たったの0.3%、重さにしてわずか426トンだった。
実際にどこまで届いたのか
- 農水省が業者に引き渡したのは全体の3%にあたる約4,071トン。
- 卸売業者に渡ったのは2,761トン。
- 小売店に届いたのは426トン、飲食店などの業務用は35トンにとどまった。
政府が米価の高騰に歯止めをかけるべく満を持して放出した備蓄米だが、その大半は倉庫の中にとどまったままだ。
農水省は「初動ゆえの調整不足」であると説明しており、トラックや精米工場の手配などが間に合わなかったことが流通の遅れの要因だとしている。ただし、「特別なボトルネックがあるわけではない」と強調する。
米価への影響は出ているが…
3月の米の相対取引価格(2024年産)は前月より2%下がり、8か月ぶりに値下がりした。備蓄米の市場投入が価格抑制に一定の効果をもたらした格好だが、流通量の少なさから消費者の実感にはつながりにくい。
- 卸売業者に渡った備蓄米の価格は、一般の流通米より1,600円以上安かった(1俵あたり)。
- 小売業者への販売価格は3万6,843円で、137事業者に卸されたが、大半は首都圏や関西圏などの大都市に集中していた。
構造的な課題も背景に
今回の流通の遅れは、単なる手配ミスや初動の混乱だけでなく、日本の米流通の構造的な問題を浮き彫りにしている。
- 業者による「買い占め」や「売り惜しみ」が横行しやすい市場環境。
- 長年の減反政策の影響で生産調整が柔軟にできず、急な需要増に対応しづらい。
- 農業従事者の高齢化と後継者不足も背景にある。
今後の見通しと政府の姿勢
政府はこの備蓄米放出を通じて計21万トンを市場に流す予定。初回はつまずいた格好だが、農水省は「順次、流通が本格化する」と強調している。
また、2025年度産米については、29の道県が増産の意向を示しており、将来的な供給安定に向けた兆しも見え始めている。
とはいえ、消費者にとって「スーパーの棚に並ぶまで」がすべてだ。政府が掲げた「物価高対策」の実効性が問われる中、次の動きが注目される。今後の備蓄米の再放出がどこまで現場に届くか、そして本当に家計を助けるのか。流通網の整備や透明性の確保も、今後の大きな課題となりそうだ。