2025-11-07 コメント: 1件 ▼
花城大輔沖縄市長が発表したおきなわマラソン休止:31年の歴史に幕で露呈する運営危機
1993年に始まり31年の歴史を誇るおきなわマラソンが、深刻な財政問題と運営体制の破綻により休止に追い込まれました。花城大輔沖縄市長は1月7日の記者会見で「ランナーの期待に沿えず残念」と述べ、2027年2月の再開を目指すことを発表しましたが、地方スポーツイベントが直面する構造的課題が浮き彫りになっています。
31年の歴史と特色あるコース
おきなわマラソンは世界遺産の勝連城跡を眺め、日本で唯一米軍嘉手納基地内を走れるユニークなマラソン大会として親しまれてきました。沖縄市・うるま市・嘉手納町・北谷町・北中城村の中部5市町村を巡る42.195キロのコースは、沖縄らしさを満喫できる陸連公認コースとして多くのランナーに愛されていました。
大会の創設は1993年3月で、琉球新報が主催していた「新報那覇マラソン」から発展的解消して誕生しました。初代大会長の新川秀清元沖縄市長は「中部が心を一つにして取り組めるイベントをしたい」という思いで大会をスタートさせ、嘉手納基地内コースも第1回から設定されていました。
特筆すべきは絶え間ない沿道の応援と充実したエイドで、沖縄の特産品を味わえる給水所や、基地内での英語での声援など、他の大会では味わえない体験ができることから「温かいおもてなしのマラソン」として全国的に評価されていました。
深刻化する財政状況
休止の最大要因は2023年度・2024年度と2大会連続で発生した数千万円規模の赤字です。実行委員会の譜久元武志事務局長によると、エントリー数の減少と資材費・人件費の高騰が主な原因とされています。
マラソン大会の収益構造は一般的に参加費収入が全体の1割程度にとどまり、スポンサーからの協賛金や行政からの補助金が収入の大部分を占めます。おきなわマラソンも例外ではなく、エントリー数減少により参加費収入が落ち込むと、スポンサーセールスにも悪影響が及ぶ負のスパイラルに陥ったとみられます。
さらに深刻なのは経理担当職員の退職による会計処理の不備で、2024年度の決算が不承認となる事態に発展しました。前回大会では一部経費で予算を超過した支出が行われるなど、運営体制の根本的な問題が指摘されています。
ランナーからの失望と困惑
休止発表を受けて、SNSではランナーからの失望の声が相次いでいます。
「おきなわマラソン休止のニュースにショック。来年楽しみにしてたのに。嘉手納基地コースもう走れないの?」
「31年続いた大会がこんな形で休止とか悲しすぎる。数千万円の赤字って運営どうなってたの?」
「走らせてくれー!沖縄の温かい応援が恋しい。2027年まで待てないよ」
「会計処理の不備って、お金の管理もできてないのに大会運営してたってこと?信じられない」
「他のマラソン大会も同じような問題抱えてるんじゃない?地方の大会はどこも厳しそう」
特に、大会公式X(旧ツイッター)が9月30日に「参加申し込み開始が10月上旬にずれ込む予定」と投稿していたことから、多くのランナーが開催を期待していただけに、突然の休止発表に対する失望は深刻です。
地方スポーツイベントの構造的課題
おきなわマラソンの休止は、全国の地方スポーツイベントが抱える共通の課題を象徴しています。人口減少と高齢化により地方のマラソン人口は減少傾向にあり、特にコロナ禍以降は遠方からの参加者減少が深刻な打撃となっています。
一方で、資材費・人件費・警備費の高騰は大会運営費を押し上げており、参加費を大幅に値上げしない限り収支バランスの維持が困難になっています。しかし、参加費の値上げは更なる参加者離れを招く可能性があり、ジレンマ状況に陥っています。
また、運営ノウハウを持つ人材の不足も深刻で、今回のように経理担当職員の退職が大会運営に致命的影響を与えるケースも増えています。多くの地方大会がボランティアと少数の専門スタッフに依存した脆弱な体制で運営されているのが実情です。
再建への道筋と課題
実行委員会は2027年2月の再開を目指し、運営体制の再構築、収支の再検討、予算執行透明性の確保、規模・レース内容の再定義を進めるとしています。しかし、単に休止期間を設けるだけでは根本的解決にならず、抜本的な改革が求められます。
具体的には、デジタル化による運営効率化、協賛企業の新規開拓、観光との連携強化などが考えられますが、最も重要なのは持続可能な収益モデルの構築です。参加費に過度に依存しない多角的な収入源の確保と、コスト構造の見直しが不可欠でしょう。
おきなわマラソンが再び「世界遺産と米軍基地を駆け抜ける唯一無二の大会」として復活できるかどうかは、沖縄県全体のスポーツ振興と観光振興にも大きな影響を与えることになります。