2025-04-24 コメント投稿する ▼
アラスカLNGが日米交渉の焦点に 日本企業の投資に期待と高コストの懸念交錯
アラスカLNGが日米関税交渉の焦点に 日本の参画に期待と懸念
日米両政府が進める関税交渉の新たなテーマとして、アメリカ・アラスカ州の大型LNG(液化天然ガス)プロジェクトが浮上している。今月30日から訪米する赤沢亮正経済再生担当相が臨む第2回協議では、このLNG案件が交渉カードの一つとして検討される見通しだ。
米国側の思惑と日本の期待
米財務省のベセント長官は今月初め、アラスカの石油・天然ガス開発が、日本や韓国、台湾との貿易交渉で「関税の代替策になり得る」と発言。米国としては、日本の投資を呼び込み、自国資源の輸出拡大とアラスカ州の経済活性化を狙っている。
プロジェクトは、北部ノーススロープのガス田からガスを採取し、約1300キロのパイプラインで南部まで輸送、液化してアジアへ出荷するという構想。2030年代の稼働を想定しており、年間生産量は2000万トンと、日本の輸入量の3分の1近くをまかなう規模になる。
日本側にも前向きな声がある。電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は18日の会見で、「燃料調達の選択肢が広がり、エネルギー安全保障の観点からもメリットがある」と評価。アラスカは地理的に米国本土より日本に近く、輸送期間が20〜30日短縮される可能性もある。
高額な事業費に慎重論
一方で、最大のネックは事業費の大きさだ。アラスカ州のダンリービー知事は今年3月、「総費用は約440億ドル(約6兆6000億円)」と明かした。これは米テキサス州で進められているLNGプロジェクト(約200億ドル)の倍以上にのぼる。加えて、基本設計すら始まっておらず、今後の試算次第ではさらに膨らむ懸念もある。
日本ガス協会の内田高史会長は23日の会見で、「どのようなLNGになるか分からないが、価格は高くならざるを得ないのではないか」と懸念を示した。
政権交代リスクも無視できず
プロジェクトのもう一つの不確実性は政治的リスクだ。トランプ前政権が進めてきたこの計画は、2030年代に本格稼働する予定。しかし、次の大統領選挙以降、気候変動対策を重視する民主党政権が誕生した場合、化石燃料の輸出政策が見直される可能性もある。
日本エネルギー経済研究所の柳沢崇文研究主幹は、「初期投資が大きく、事業リスクも高い。今の段階で日本企業が参画を決断するのは難しい」とした上で、「米側には、採算性を裏付ける追加のデータや長期契約の枠組み提示などが求められる」と指摘している。
- アラスカLNGは、日米関税交渉の新たな切り札として注目されている
- エネルギー安全保障や輸送面では日本にとって一定のメリット
- しかし、事業費の高さと価格競争力に懸念
- 政権交代による政策リスクも見過ごせない
日米両政府が貿易のバランスを探る中で、このLNGプロジェクトが現実味を帯びてくるかどうかは、今後の協議次第だ。投資の是非を判断するには、まだ多くの情報が必要とされている。